うたまつり 曲目紹介① 三善晃「宇宙への手紙」

1994年五所川原合唱団の委嘱。谷川俊太郎さんの「渇き」「あはは」「ふるさとの星」に三善晃さんが付曲。ほぼアカペラの作品だが地球がひび割れる心臓の音としてピアノが一瞬鳴り響く。生命のメッセージを繰り返し歌い、生きること、出会い、愛し合う世界のよみがえりを祈る。

1曲目の「渇き」は何かに飢え求めるような音が続きます。あらゆることに渇きを覚え、最後は何に渇いているのかもわからなくなってしまいます。混迷の後の〈水ヲ下サイ 水ヲ……〉は、言葉と音楽が心に重く響きます。

2曲目の「あはは」は全編平仮名の詩。花びらが散るところから地球が爆発して消えるに至るまであらゆるものが崩れていきます。音楽も詩が進むにつれて響きが濃密になり、一瞬登場するピアノとともに頂点に達します。その後の「あははとわらった/こどもがひとり」が空に虚しく響きます。

3曲目の「ふるさとの星」は地球への愛を繰り返し歌います。伸びやかな旋律と美しい和声から曲が始まり、徐々に壮大な響きへと向かってきます。「我がふるさとの星/地球はみどり」が詩の中で3度現れますが、音楽は3度とも異なる響きで書かれており、そのどれもが愛おしく感じます。